工事現場の仮設ハウスは建築確認も仮設許可も不要?

工事現場でよく見かける仮設ハウス。ユニットハウスやコンテナハウスを利用して現場事務所や休憩所などに使わます。
これらは仮設という言葉が付くものの、建築物には変わりありません。
建築物である以上は通常建築確認が必要ですし、仮設であっても仮設建築物の許可が必要です。
しかし法律上、工事を施工するために工事現場に設置された仮設建築物については、建築確認はもちろん仮設許可も不要とされています。

この記事では、工事施工のために設けられる仮設建築物についてまとめています。

根拠条文は建築基準法第八十五条第2項

まずは根拠となる条文を見てみましょう。

建築基準法第八十五条第2項

災害があつた場合において建築する停車場、官公署その他これらに類する公益上必要な用途に供する応急仮設建築物又は工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場その他これらに類する仮設建築物については、第六条から第七条の六まで、第十二条第一項から第四項まで、第十五条、第十八条(第二十五項を除く。)、第十九条、第二十一条から第二十三条まで、第二十六条、第三十一条、第三十三条、第三十四条第二項、第三十五条、第三十六条(第十九条、第二十一条、第二十六条、第三十一条、第三十三条、第三十四条第二項及び第三十五条に係る部分に限る。)、第三十七条、第三十九条及び第四十条の規定並びに第三章の規定は、適用しない。ただし、防火地域又は準防火地域内にある延べ面積が五十平方メートルを超えるものについては、第六十三条の規定の適用があるものとする。

今回は工事現場の仮設事務所の話ですから、上記条文中の「工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場その他これらに類する仮設建築物」についてが該当します。

工事を施工するための建築物であること

この法律の対象物は「工事を施工するため」の仮設建築物です。工事の施工に直接関係のないものはダメです。
また工事を施工するための仮設なので、工事期間を超えて存続することはできません。工事完了に伴い速やかに撤去されなければなりません。
逆に言えば3ケ月や1年の定めはありません。これは同条第3項および第4項で応急仮設建築物に対してのみ期間の指定があることからも読み取ることができますね。

現場とはどの範囲までを指す?

次に「現場に設ける」という部分で場所の要件が示されてます。
現場とは随分雑な言い方で、その範囲がどこまでを指すのかは明確に定められてはいませんが、基本的には工事現場敷地内を指すと解釈されているようです。
特定行政庁によっては、工事現場の敷地外にあっても距離的・機能的に支障のないものであれば限定的に当該法律の範囲内と判断する場合もあるそうです。

例えば、大阪府寝屋川市の公表している審査基準で見ると、次のようになっています。

  1. 工事現場の敷地内
  2. 工事現場の敷地に接しているほかの敷地内
  3. 工事現場の敷地に道路又は水路等で分離されている敷地内
  4. 工事現場から当該施設が設置されている敷地までの距離が半径300m以内にあり下記の要件を満足しているもの

4番目の「下記の要件」は結構細かく書いてありましたのでここでは省略させていただきました。
工事現場となる自治体で確認する方が有用かとは思いますが、興味のある方は下記のリンクから見てみてください。

どんな用途の建築物ならOKなのか

該当する仮設建築物の用途として示されているのは「事務所、下小屋、材料置場その他これらに類する」の部分です。
具体的に表記されている事務所、下小屋(職人が材料の準備・加工をする場所)、材料置場はそのまま理解できますが、「その他これらに類する」とはかなり曖昧ですね。
これについて例えば、工事の施工に従事する従業員のために設けられる宿舎や休憩室・喫煙所やトイレなどの他、工事に必要な機械室などが「類する」と認められるようです。

反対に、工事前に使っていた建物の代わりに使用する仮設建築物や、期間限定でも工事を施工する目的以外で使用される仮設建築物は同条2項の対象とはならず、同条5項の仮設建築物に該当します。

同条2項の対象とならない仮設建築物

以下に示すような同条2項に該当せず5項に該当する仮設建築物の場合は、建築確認は必要なくとも仮設建築物の許可が必要となります。

工事前に使っていた建物の代わりの例

  • 仮設店舗等
  • 仮設郵便局・銀行
  • 仮設学校

工事施工目的以外の例

  • 選挙用事務所、講演会事務所
  • 仮設住宅展示場
  • 仮設興行場・博覧会建築物等
  • 仮設申告所

具体的に何が緩和されるの?

さて、どこにあるどのような仮設建築物が建築基準法第八十五条第2項に該当するのかが理解できたところで、何を「適用しない」と言っているかについて見ていきましょう。
適用しない条文の項目を書き出してみると、以下のようになります。

  • 第六条~七条の六(確認申請、中間検査、完了検査、使用の制限)
  • 第十二条第一項~第四項(定期報告)
  • 第十五条(工事届)
  • 第十八条(第二十五項を除く)(国・都道府県等の計画通知等)
  • 第十九条(敷地の衛生及び安全)
  • 第二十一条~二十三条(大規模建築物の主要構造部、屋根、外壁)
  • 第二十六条(防火壁)
  • 第三十一条(便所)
  • 第三十三条(避雷設備)
  • 第三十四条第二項(非常用昇降機)
  • 第三十五条(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術基準)
  • 第三十六条(実施・補足のための技術的基準のうち法第十九条、二十一条、二十六条、三十一条、三十三条、三十四条第二項、三十五条に係る部分)
  • 第三十七条(建築材料の品質)
  • 第三十九条及び四十条(災害区域、条例による制限付加)
  • 第三章(都市計画区域等における建築物の敷地、構造、建築設備及び用途)

ただし、防火地域又は準防火地域内にある延べ面積が五十平方メートルを超えるものについては以下の適用が求められます。

  • 第六十三条(屋根)

このように適用されない項目がかなり沢山あります。
建築基準法第八十五条第2項に該当する限り、申請・報告・届・通知などが大幅に緩和され、その他建築物に求められる条件も一部緩和されることがわかりましたね。
※もちろんこれら適用しないと明示されている項目以外については、当然適合させる必要があります。

建築確認の取得が一筋縄ではいかないユニットハウスやコンテナハウスが工事現場で多用されることもこれで納得が行きますね。

以上、工事施工のために設けられる仮設建築物についてのまとめでした!

※当記事の内容はあくまで当社の見解です。個々の具体的な事例についての判断は必ず所轄の役場にご相談ください。